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東京高等裁判所 昭和39年(ネ)2486号 判決 1967年10月31日

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張及び証拠関係は、控訴代理人において、

第二次納税義務者の義務は補充的性質を有し、租税徴収権者は主たる納税義務者の財産につき「滞納処分をしてもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合に」はじめて第二次納税義務者に対し徴収をなし得るのであるから、主たる納税義務者に対し滞納処分をなし得ない間これに先んじて第二次納税義務者に滞納処分をなし得ることはあり得ない。また主たる納税義務者に対する更生計画の成否内容により第二次納税義務者の具体的な義務内容は重大な影響を受けるのである。従つて本件建物の公売処分は会社更生法第六七条第二項の明文に反する点でその瑕疵は明白であり、また本来的に納税義務を負担するのでない第二次納税義務者の財産権を侵害する点で重大な瑕疵に該当する。従つて本件建物の売却決定は無効である。

と述ベたほかは、原判決事実摘示のとおりである。

理由

当裁判所の本件に対する判断は、次に補充するほか、原判決理由と同旨であるからこれを引用する。

財産譲受による地方税の第二次納税義務そのものは、主たる納税義務者に対する滞納処分前においても一定要件のもとに発生するが、その補充的性質を貫く建前から、第二次納税義務者の財産の換価は、主たる納税義務者の財産を換価に付した後でなければすることができないという制限を受ける(昭和三四年法律第一四九号による改正前の地方税法第一一条の二第二項、第一一条の三第二項・現在の地方税法第一一条第三項参照)。それゆえ主たる納税義務者について会社更生法による更生手続が開始されれば、その後一年間はおのずから前記制限により、第二次納税義務者の財産につき少くとも公売その他の換価はできないわけである。この点においても本件建物の公売処分は瑕疵があるといわなければならない。しかしながら、右のような場合、更正手続開始前すでに主たる納税義務者の財産を換価に付していることもあり得るし、差押えるベき財産がないこともあり得ることを考えれば(本件の場合甲第一号証によれば後者に該当するようにもみえるが、それなら訴外会社に対し更生手続が開始されるはずはないと思われるから、右甲第一号証の記載は必ずしも措信できない。)第二次納税義務者の財産の換価ができない場合かどうかは外観上明白であるとはいえず、この意味で本件公売処分の瑕疵も明白ではなく当然に無効なものとは解し得ない。

よつて原判決は正当であるから本件控訴を棄却すベきものとし、訴訟費用につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

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